先生のブログ

張替の『ほぼ日通信』

プロフィール
2010/01/25

魯迅『故郷』を読む ― 「希望格差社会」の現代だからこそ

 今日から、3年生の国語で魯迅・作 『故郷』を読みます。生徒たちにとっては、国も時代も異なる状況を理解し、主題を読み取るのはなかなか大変な作品です。しかし、竹内好氏の訳のすばらしさか、生き生きと描かれた主人公の回想場面に、みな引き込まれていきます。私自身、中学3年生でこの作品と出会ったとき、広大な西瓜畑の番をする主人公とルントウの様子や、獰猛な「チャー」の姿などが、月明かりの下で眼前に立ち上がってくるような気がしました。

 

 魯迅は、この『故郷』をこう結んでいます。

 

 まどろみかけたわたしの目に、海辺の広い緑の砂地が浮かんでくる。その上の紺碧の空には、金色の丸い月が懸かっている。思うに希望とは、もともとあるものともいえぬし、ないものともいえない。それは地上の道のようなものである。もともと地上には道はない。歩く人が多くなれば、それが道になるのだ。

 

 主人公は変わり果てた故郷の姿に落胆し、孤独感を強めていきます。しかし、次の世代、甥のホンルとルントウの息子シュイションの結びつきを見て、次の世代に未来を託そうと考えるようになります。そして、ホンルたちが自分と同じ思いをしないためには、新しい生活が必要であると感じます。

 当時の中国の国内情勢に失望感を覚えながらも、生活の夢と希望を求める作者の思いが、この作品の中につまっています。

 

 山田昌弘さんが『希望格差社会』(筑摩書房)を出版したのは、2004年。職業・家庭・教育、そのすべてが不安定になり、リスク社会となった日本。「勝ち組」と「負け組」の格差が、いやおうなく拡大する中で、「努力は報われない」と感じた人々から「希望」が消滅していく……と、山田さんは指摘します。「希望が持てる人」と「将来に絶望している人」の格差は、年々広がるばかり……。

 

 こんな社会だからこそ、魯迅『故郷』を噛み締めたいと思います。

 

 私は、いつの時代も、「希望」を失ってはならないと思います。心が折れたら、人は一歩も前に進めなくなります。他の誰かと比べて一喜一憂し「希望」を喪失するのではなく、昨日の自分よりちょっと成長した自分を発見して、明日に「希望」を繋げたい。そんな生き方ができるように、今日も一歩一歩、歩いていきたいと思います。

4 コメント
コメント一覧
  • 1

    私もです。

    by: 長野雅弘, on 2010/01/25
  • 2

    日々の小さな出来事に喜びを感じ、明日への「希望」を見出せる……。しあわせな生き方を生徒たちに伝えたいと思います。

    by: 張替起子, on 2010/01/26
  • 3

    魯迅の「故郷」、私も憶えてます^ ^
    しかも、私も月明かりに照らされた西瓜畑のシーンなどを
    映像化できたことをよく憶えています。
    「希望」。いい言葉であり、大切な言葉です。
    この言葉の意味を伝えることが出来たり、
    生徒の皆さんに教えてもらえる仕事に就けた私は、
    本当に幸せ者なんだと感じています。

    by: イチカワ, on 2013/06/04
  • 4

    イチカワ先生
     コメントありがとうございます。
     魯迅の『故郷』は中学3年生の教科書に,長い間採択されている作品です。時が移り変わっても,変わらず大事にしなければならないもの。普遍の価値を持つ作品なのでしょう。
     予測不能の出来事が起こる,生きづらい世の中ですが,こんな時代だからこそ,「希望」の灯を心にともして,しなやかに生きる力が必要ですね。

    by: 張替起子, on 2013/06/04
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